◆住まいの探し方◆

 学生が住まい探しを行う場合、注意すべきポイントは、

@「学生の住まい探しと社会人のそれとは根本的に違う」

A「同じ学生でも新入生と在校生とでも大きな違いがある」という2点です。

 A「同じ学生でも新入生と在校生とでも大きな違いがある」については、「住み替えに便利な情報」で、在校生の住まい探しについてのアドバイスを行っていますので、ここでは、@「学生の住まい探しと社会人のそれとは根本的に違う」について解説を行います。

★学生の住まい探しと社会人のそれとは根本的に違う



 ――その特殊な事情を知らないととんだトラブルに……
  

 新入生の住まい探しを行うとき、新入生本人はもちろん、保護者の方も、その「特殊事情」を意識している人はほとんどいません。
 しかし、ここで述べるような特殊な事情を理解しておかないと、悪質な業者に引っかかったり、どうしようもないことで不満に思ったりして、結果的に、満足した住まい探しができなくなります。特殊な事情はたくさんあります。しっかり理解しておきましょう。 なお、さらに、詳細な情報を知りたい方は、当団体スタッフの「楽々賃貸生活」をご覧ください。

 新入生の住まい探しと社会人のそれとの違いは、次のようなものです。

  新入生の住まい探し ふつう(社会人)の住まい探し
対象となる物件 空き予定(3月)の住まいが主体 既に空室となっている住まいが主体
地域の事情 まったく知らない場合がほとんど 知っている場合がほとんど
不動産業者の評判 ほとんど知るチャンスがない 知っているか、知るチャンスがある
住まい探しの時間的余裕 半日程度ですべてを決める必要がある ある程度の日数をかけられることが多い
住まい探しの競合者の有無 大勢の新入生と一緒に探す場合が多い 他の人と重なる場合は少ない
業者からの説明 簡略化されがち(納得できるまで聞き出すというのは事実上不可能に近い) 納得できるまで時間をかけて聞き出すことができる
住まい探しの時期 ほとんど「春」のみに限定 「春」は多いが他の時期も少なくない
社会的な経験の有無 ほとんど皆無(なのでだまされやすい) 社会的な経験があるのでだまされにくい
入居審査 簡略化ないしは「審査なし」も多い 1週間程度の審査期間が多い
契約期間 1年間が多い(地方により事情は異なる) 2年間が多い(地方により事情は異なる)
「1年契約」の日数計算 365日よりも短い場合が多い 通常、365日間をさす
途中解約予告時期 「退去月の2・3ヶ月前」も多い 「退去月の1ヶ月前」が多い
住まい探しの有利・不利 在校生よりも不利な場合が多い 特に誰かよりも有利・不利ということはない
住まい探しの場所 業者だけでなく、大学や生協が主流の場合がある 仲介業者で探すのがふつう
契約書の交付 契約手続き後に郵送される場合も多い 契約手続きの際に交付されるのがふつう

 新入生の住まい探しは、ふつうの住まい探しに比較して、これだけ数多くの「違い」があることに驚かれると思いますが、これらの「違い」を押さえておかないと、「そんなはずではなかった」ということになりがちです。ぜひ押さえておきたいものです。

★失敗しない「不動産業者の選び方」

1.「不動産業者」の種類や違いを理解しよう

 @物件を紹介しているところの違いを知ろう

 物件を紹介しているところは、不動産業者以外にも、大学や生協など、場合によれば家主(組合など)が直接紹介しているところもありますので、それらの違いを押さえておきましょう。

 大学 福利厚生の一環で紹介していますので、手数料は無料がほとんどです。ただし、家賃の低額な「貸間」などの紹介が中心であることが多いこと、あくまで「紹介」にとどまるため、手続きやトラブル対処は直接家主と行うケースがほとんどです。

 生協 大規模な大学生協では、宅建免許を取って住まい紹介をしているところも多く、大学周辺の物件の大多数を取り扱っている場合もあります。手数料は一般業者よりも割安ですが、「サービス内容」は千差万別です。

 家主家主との直接契約の場合には、当然ながら、「仲介」業者はありませんので、手数料は不要です。その代わり、何かトラブルが発生しても、どこも仲介してくれないということを覚悟しなければなりませんので、できれば、既存の入居者に、家主さんの評判を聞いておくほうがよいでしょう。



2.不動産業者の種類と特徴、問題点も知っておきましょう

 「新入生の住まいの紹介は、不動産業者に限らない」とはいっても、一般的に言えば、不動産業者で住まいの紹介を受ける場合も少なくありません。

 そこで、まず、不動産業者の種類とその特徴についての知識を得ましょう。

 住まいを借りるときに訪れる不動産業者には、大きく分けて、賃貸仲介業者と賃貸管理業者という2つの種類の業者があります

 ・賃貸仲介業者‥家主と借主の間に立って、物件の紹介を行う業者です。家主から直接依頼を受けて、主に依頼を受けた物件を紹介する元付業者と、家主からの依頼は受けず、借主の希望条件をもとに、あちこちの業者から集めた物件を紹介するブローカー的な客付業者があります。

 ・賃貸管理業者‥自社が管理している物件のみを紹介する場合が多いのですが、それだけに、物件の詳細まで把握しています。一部の業者は、「家主の代理人」としての業務に熱心なあまり、トラブル対処の際に、家主の立場に立ちすぎるきらいがあることも‥。

 

3.不動産業者の得意・不得意

 不動産業者の得意・不得意という角度から、不動産業者を区別してみましょう。

 まず、「大学や学校周辺の物件を探す」という場合には、大学や生協、そして、大学・学校の近くにある不動産業者に、たくさんの物件情報が集まっています。これらに絞って住まい探しを行えばよいでしょう。

 次に、「交通の便利な駅周辺の物件を探す」という場合には、その駅前でもっとも立地条件のよい不動産業者を訪問するのがよいでしょう。

 なぜなら、近隣の家主の多くは、一見客が一番来やすい場所にある業者に、斡旋の依頼をするからです。

 その次は、「地域を限定するのではなく、希望する条件にこだわって広い範囲で物件を探す」というような場合には、支店数の多く、情報がネットワークで結ばれている大手業者が便利でしょう。

 一人暮らし用の貸家や貸間を希望する場合には、大学や生協にしか期待できないでしょう。

 しかし、ファミリー向きの貸家となれば、地元で古くから営業している昔ながらの風情のある業者の方が、たくさんの情報を抱えている可能性があるのです。

 こうした業者の得意分野を知っておくと、住まい探しがスムーズにできるでしょう。

 

★業者訪問時のチェックポイント

 ここからは、住まい探しの実践編です。

1.住まい探しの曜日・時間帯

 できるだけ土曜日・水曜日を避けて、それ以外の日に行いましょう。

 土曜日は、他の新入生もたくさん来店・来場しているので、会場そのものもたいへん混雑します。待ち時間が長くなったりもします。その上、ていねいな説明が受けにくいのです。結果的に不満の残る住まい探しになってしまうこともあるのです。

 一方、水曜日というのは、不動産業者の定休日となっていることが多いのです。そこで、できるだけ土曜日・水曜日を避けて来店するようにしたほうがよいのです。

 また、大学や大学生協を訪問する場合には、開設(営業)日・開設(営業)時間帯を事前に確認しておきましょう。特に、大学の場合には開設時間が短い場合もあるからです。

 訪問する時間帯としては、できるだけ午前中にするようにしましょう。

 その理由は、春先などは午後遅くなると薄暗くなり、日当たりが確認できなかったり、あせって条件のよくない物件を決めてしまったりするようなことにもなりかねないからです。それに、住まいの契約が一通り終了し、各種の手続きを終えるのにけっこう時間がかかるからです。
 

2.住まい探しの服装

 住まいの契約の成立には、学生(借主)側が一方的に決めるものではありません。あくまで、家主さんの「承諾」が必要です。家主さんは、年配の方が多く、今どきの若者のファッションに理解があるとは限りません。あまりに奇抜な服装は、それだけで、選べる物件の範囲を狭くしてしまいます。もちろん、保護者にも同じことが言えます。
 

3.情報を小出しにする業者は要注意

 新入生の住まい探しの時間は限られています。そんな中で住まい探しをするわけですから、住まい探しの相談にきちんと乗らないで、自社の物件を押しつけてくるようなところでは、気に入った物件を見つけ出すのは困難でしょう。そういう場合には、早めに切り上げて、他の業者に行ったほうがよいでしょう。
 

4.「契約の催促」についての注意

 一般的には、「契約をやたらと催促させる業者は問題あり!」ということになりますが、新入生の住まい探しの場合には、ちょっと事情が違います。ぐずぐずしていると、条件のよい物件が、他の新入生によってどんどん契約されていってしまうからです。なぜなら、一人の新入生が契約するかどうかの判断を下すまで、他の新入生の契約を保留扱いすることはできないからです。

 そこで、契約の意思がはっきりしたら、できるだけ早く契約手続きに入ったほうがよいのです。

★物件資料の主な見方

 不動産業者を訪問したときに、見せてもらえる物件の資料は、業者によってまちまちですが、基本的なところは変わりません。そこで、基本的な情報についての理解の仕方を学んでおきましょう。

1.所在地

 一般の不動産紹介においての「所在地に関する情報」は、公共交通機関の最寄駅からの徒歩での所要時間のみの掲載がふつうです が、学生の住まい探しには、通学時間も必要ですので、その点の確認が欠かせません。

 徒歩での所要時間は、法律で、道路距離を80メートル=1分として計算し、1分単位に切り上げることとしています。ただし、坂道や信号待ち時間などは考慮しなくてもよいということになっていますので、たとえ、法律上、正確な表示をしていても、実際には、多少所要時間が長くなりがちです。

2.入居者の性別

 学生の住まいの場合には、男子専用物件、女子専用物件、男女物件の3種類の住まいがあります。

 男子や女子の専用物件の場合には、入居者の性別が限定されるだけでなく、なかには、異性の立ち入りそのものも禁止されているところがあります。

3.学生専用物件と一般物件

 学生用の住まいには、学生専用物件と一般社会人も入居している一般物件の2種類があります。

 一般物件の場合には、生活習慣の違う社会人と学生が同じところに住むため、騒音をめぐってトラブルが発生することがあるので、学生専用物件よりも注意が必要です。

 大学の周辺には、学生専用物件が多いのですが、少し離れると、一般物件がほとんどということになります。一般的には、学生専用物件から部屋が決まっていく傾向があります。

4.物件の種別・構造

 物件の種別は、一般的には、マンション、ハイツ、アパート、コーポ、学生会館、貸間・貸家などですが、地域や業者によって、呼び方が違っていたり、定義が若干異なっていたりしますので、種別は参考程度に考えていたほうがよいでしょう。

 物件の構造(建築工法)は、主な区分として、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(SS造)、木造(W造)があります。それぞれの構造の特徴については、学習資料編で確認してください。

5.物件全体の部屋数

 家主が直接管理する物件の規模は比較的小さく、規模が大きくなると管理会社の管理が多くなります。

 家主の直接管理と管理会社の管理のどちらがよいかは、一概には言えませんが、夜中にカギを失ったりしたときなどは、家主が直接管理している場合のほうが対応は早いでしょう。

 次に、家主が管理していない小規模物件の場合には、管理面が行き届かないことがあるようです。仮に管理会社に依頼していても、たまに巡回見回りをするくらいが多いので、管理が不十分になる傾向があります。

6.完成年・改築年

 完成年でもっともポイントとなるのが、宮城県沖地震の反省を踏まえて誕生した新耐震基準が導入された1981年6月以降に、建築確認を受けた建物かどうかです。要するに、1981年以前の建物は、新耐震基準制定前であるため、大きな地震が来たら危険だということです。

 要チェックの2番目は、建築年の古い物件の場合に、建築年(完成年)の記載がないことや、改築されている場合には改築年だけを記載していることがあることです。

 さらに言えば、建物の一部を単に「改装」しただけなのに、「改築」という表示をしていることもあるのです。「改装」は、室内改装のように、建物の構造に一切関係なく、単に表面上の処理に過ぎないのに対し、「改築」は、構造に悪影響を与える亀裂の修復など、建物の構造に関するものです。

7.契約方式

 一般的な契約方式だけでなく、定期借家契約という契約方式もあります。一般的な契約方式との違いは、契約の更新がないことと、原則として途中解約できないことなどであり、よく、「借主に不利な契約」といわれることもあります。

 しかし、見方を変えれば、次のようにも考えられます。

 一般的な契約方式では、諸処の理由により、借主が必要以上に保護されているため、「騒音やその他のトラブルなどの契約違反を続ける入居者」であっても、相当のことがない限り、退去させられることはなく、結果的に、騒音トラブルの発生は、「被害者の退去」によって、「解決した」というような場合が多いのが実態です。その点、定期借家契約では、そのような入居者は、契約満了とともに、家主が再契約さえしなければ、そのまま退去してもらうことが可能なので、結果的に、契約違反や家賃滞納をしない優良入居者だけが残ることになるのです。これは、善良な入居者にとっても、不都合とはいえないと思います。

 定期借家契約は、一戸建て以外には少ないのですが、そういう契約方式もあるということだけは押さえておきましょう。

8.契約年数

 一般の物件の契約年数は、「2年間」が多いのですが、学生専用の住まいの場合には「1年間」の方が「2年間」よりも多いようです。

 礼金等がある地域では、2年契約の礼金は、1年契約の礼金と更新料を足したものよりも割安になっているケースが多くなっています。そのことで、2年契約に誘導しようとしているのです。

9.間取図・広さ

 間取図は、室内の設備の配置や広さなどを表した図面で、不動産広告には欠かせない図面ですが、まず、知っておきたいのが、間取図は標準タイプのものであり、すべての部屋が同一ではないということです。

 ほとんど標準タイプの部屋が多い物件もありますが、中には、数種類のタイプの間取から成立している物件もあります。標準タイプでも、間仕切壁をはさんでバスルームが対になっていることが多く、この場合、間取図が反転しています。

 次に、「広さ」の表示方法についてです。「広さ」に関する表示の仕方には、「壁芯(芯芯)寸法」によるものと「内法寸法」によるものの2通りがあります。

 「壁芯(芯芯)寸法」というのは、境界壁の中心線とその反対側の境界壁の中心線に囲まれた部分の面積で、一般的な表示に使用されています。「内法寸法」というのは、壁の内側部分の面積で、不動産の登記簿に記載される面積です。ふつう、内法寸法は、壁芯(芯芯)寸法よりも7〜8%程度狭くなります。

 学生の住まいの場合も、ふつう、壁芯(芯芯)寸法により、「○○平方メートル」などと表示されるのですが、キッチンやバスルームなど、バルコニーを除くすべての部分を含んでいるので、今ひとつイメージできません。

 一応の参考までに書いておきますと、ワンルームの場合、17〜19uなら居室は6〜7帖ほど、20〜22uなら同じく8〜9帖、23〜25uなら同じく10〜11帖ほどの広さに該当するでしょう。

 「○帖」という場合の基準となる畳の大きさについても知っておきましょう。畳の大きさは、京間(関西間)の191cm×95.5cm(1帖当たり1.82u)がもっとも大きく、続いて、中京間(名古屋間)の182cm×91cm(1帖当たり1.66u)、江戸間(関東間)の176cm×88cm(1帖当たり1.55u)、そして団地サイズが主に2種類あり、170cm×85cm(1帖当たり1.45u)と160cm×80cm(1帖当たり1.28u)などとなっています。

10.「礼金・敷金」方式と「保証金・敷引(解約引)」方式の違い

 「礼金・敷金」方式は、全国的に多い契約方式です。世界的に見ても類のない「礼金」は、もともと、太平洋戦争後、焼け野原になった東京で、賃貸物件不足になったとき、政府の「地代家賃統制令」(昭和14年)によって、家賃を抑えられてきた家主が考え出した「裏技」から始まったということですが、現在でも「生きる化石」として残っています。

 物件自体が供給過剰になってきていることに加え、「東京ルール」と呼ばれている東京都の賃貸住宅紛争防止条例の影響もあり、徐々に、礼金はなくなる傾向にありますが、やはり、競争力のある物件ほど、高めの礼金を設定しているのが現実です。

 一方、神戸・大阪から始まり京都でも普及してきているのが、「保証金・敷引(解約引)」方式です。これは、入居時に、保証金として、家賃の2〜4か月分程度を預かっておき、退去時に、「敷引(解約引)」額を差し引いた残りを返却するというシステムです。

 保証金・敷引(解約引)方式自体は、敷金返還トラブルがほとんどないという意味では優れた方式なのですが、退去時の原状回復費用の「平均的な損害額」を大幅に上回るような「敷引(解約引)」や短期間の入居期間となった場合には、いくら、契約で定めていても、裁判では認められない可能性があります。

11.各費用について

 「家賃」は、部屋を借りるために、家主に支払う費用で、もっとも基本となるお金です。家賃には消費税は一切かかりません。にもかかわらず、消費税を加算している家主 (法人でもかかりません)もいますので注意しましょう。

 「共益費(管理費)」は、本来、共用部分の電気や水道、清掃、管理諸費用の実費を入居者数で按分した費用ですが、実際には、実費以上に高額な共益費を設定している場合もあり、そのような場合には、家賃に準じたものとして考えた方がよいでしょう。

 「敷金(保証金)」は、法律上の解釈としては、契約終了後、借主がすべての義務(家賃や共益費、公共料金等の未払いの費用、原状回復の費用等の支払い)が確実に終わるまで、預かっているお金で、人質のようなものです。

 「敷金」は、借主の未払いや故意・過失等による部屋の破損・汚損がなければ、そのまま返却されるのが筋ですが、返却される実際の金額は、マンションで半額以下、アパートで半額程度、貸間でほぼ全額というケースが多いようです。

 「保証金」は、敷金と似たものですが、退去時に「敷引き」あるいは「償却」と称して、一定割合の金額を無条件に引かれた残りが返却されることが多いのです。保証金は、大阪・神戸・京都など一部の地域で使われているものですが、通常、敷金方式をとっている地域でも、事務所などの契約については保証金方式がふつうです。

 「更新料」は、礼金などを徴収している物件で契約を更新する場合に、家主が借主から徴収している慣習上のお金で礼金の一種です。

 ふつう、礼金と同額以下で、地域により、家賃の1ヶ月〜2ヶ月程度の相場があります。更新料については、法律上の規定はありませんが、家主との間で合意して契約している場合は、支払う義務があります。

 「設備費」や「設備維持費」などは、共益費などとは異なり、共同部分の経費負担ではなく、各個室の設備の設置・維持費用を入居者に負担してもらおうという意味で請求されているもので、一部の物件に採用されています。支払う側から言えば、家賃や共益費の一種と考えてもいいでしょう。

 「保険料」は、通常、借家人賠償責任保険や火災保険のことです。
 火事や漏水などの事故などがあった場合に、家主への賠償責任をカバーするために加入するものです。物件や管理会社によっては、加入が義務づけられていることもあります。火災保険に関しては、もし、加入が義務づけられておらず、大学に生協がある場合には、「学生総合共済」の「火災共済」への加入がお勧めです。

 また、一部の物件(部屋数が多い場合がほとんどです)には、「ゴミ処理費」などと称する費用を徴収しています。この場合、その多くは、業者による毎日回収が行われています。費用としてはふつう月額500〜1500円程度ということが多いようです。

12.浴室の種類

 浴室の種類としては、「セパレートタイプ(SB)」、「(3点)ユニットタイプ(UB)」、「共同風呂」、「共同シャワー」、「風呂なし」の5種類があります。

 「セパレートタイプ」というのは、もっとも人気のタイプで、その多くは、浴室とトイレが独立して設置されており、浴室には洗面台が併設されているタイプです。浴槽の外で身体を洗う日本式の浴室です。

 「(3点)ユニットタイプ」は、ホテルの浴室と同様に、浴室内に、浴槽・洗面台・トイレの3つがあるものです。1993〜4年頃までの物件は、ほとんどがこのタイプです。浴槽の中で身体を洗う西洋式の浴室です。

 学生アパートの中には、各室に浴室がない代わりに、「共同風呂」が設置されていることがあります。

 共同風呂がなく、共同で利用するシャワーが設置されている物件もあります。この場合にはコインシャワーが多いようです。

13.キッチン

 学生の住まい、特に学生マンションには「ミニキッチン」が設置されていることが多くなっています。しっかりと自炊をしようと考えている人には不向きです。まな板を置くためには、最低でも120センチ幅のキッチンが 必要です。

 また、コンロの種類には、大きく分けると「ガスコンロ」、「電気コンロ」、「電磁コンロ」の3種類があります。

 「ガスコンロ」は、いまさら説明するまでもないほどですが、都市ガスとプロパンガスの違いを確認しておかなければなりません。

 また、都市ガスの場合には、ガスの規格が地域によって異なっていますので、ガスの規格も確認しておかないと、実家付近で購入したガスコンロが、下宿先では使えないということも多いのです。

 「電気コンロ」は、現在、さまざまなタイプが販売・導入されています。

 電気コンロと似て非なるものに「電磁コンロ」があり、一部の物件に採用されています。いわゆるIHクッキングヒーターなども電磁コンロの一種です。

 いずれにしても、このように、コンロ類の種類はいろいろありますが、学生の住まいのほとんどは、「1口コンロ」です。ほんの一部に「2口コンロ」がある程度です。

 電気コンロや電磁コンロの場合は、そのほとんどが備えつけられていますが、ガスコンロの場合には、「ガスコンロが最初から設置されている」場合、「ガスコンロを持ち込む」場合、そして、「ガスコンロの持込が原則だが、前の入居者が残していったコンロがある」場合の3通りがあります。必ず、家主や管理会社に確認しておかなければなりません。

14.洗濯機

 洗濯機に関しては、主に、次の6種類があります。

 第一は、「システムランドリー」というものです。洗濯機と乾燥機がセットになって、物件の設備として備えつけられているものです。

 第二は、「室内設置可」(「室内置場あり」)です。洗濯機は設置されていませんが、洗濯機の置場スペース(防水パンがあります)が室内に確保されているというものです。システムランドリーを除くと、もっとも人気のあるタイプです。

 第三は、「室外設置可」(「ベランダ等設置可」、「室外置場あり」など)です。 洗濯機の置場が、ベランダなど、部屋の外に確保されているというものです。「室内設置可」に比べると、人気が落ちます。

 第四は、「コインランドリー」です。100〜200円のお金を入れて利用する共同設備です。

 第五は、「共同洗濯機」です。コインランドリーと似ていますが、通常は、共同で利用できるように、家主が無料で設置した洗濯機のこととして区別しています。

 最後に第六として、「洗濯設備なし」があります。この場合には、近隣のコインランドリーを利用するしか方法はありません。貸間などに多いタイプです。

15.電話設備

 電話設備に関するものには、主に、次の4種類のものがあります。

 従来から多いのが、「引込可」というものです。NTTなどによる工事を経て、電話が通じるようになる物件です。

 第二は、「専用(電話)」です。各室専用の回線と電話機が最初からセットされているもので、電話機が建物の玄関のオートロックと連動しているものもあります。電話の基本料や通話料以外に、電話機の使用料金が必要なこともあります。 なお、インターネットに接続できな い場合があるので確認が必要です。また、オートロックと連動しているような場合には、電話機を自分の好みのものに変更できないこともあります。

 第三は、「専用回線」です。「専用(電話)」と似ていますが、電話機自体は自分の好きなものを選べるタイプのものです。ただし、オートロックと連動している物件では、電話機をすぐにつけないと、引越しのトラックなどが来ても、連絡できないというケースもあります。やはり、電話の基本料・通話料以外に、専用回線の使用料が必要な場合があります。

 第四は、「リース」です。これも、「専用(電話)」、「専用回線」と似ており、家主や不動産業者によっては、区別しないで呼んでいることもありますので注意が必要です。電話リースというのは、電話回線や電話機の設備をリース契約で借りるというものです。従って、電話の基本料・通話料以外に、電話リース料金がかかってきます。

 「専用(電話)」、「専用回線」、「リース」のいずれも、利用しようがしまいが、料金が請求されるというのが一般的です。

16.インターネット関連設備

 インターネットが普及するにつれ、賃貸物件でもインターネットに関連する設備を導入するところが増えてきました。

 インターネットに関する設備の状況としては、さまざまなタイプがありますが、ごく大雑把に分類すると、次のようになります。

 もっとも利便性が高いのが、「入居日からブロードバンドが即日使用可能かつ無料」というタイプです。これは、あらかじめ、各部屋にLAN回線を設置しておき、入居後、電気コンセントと同じような利便性で、LANに接続すれば、すぐにブロードバンドが使えるというものです。しかも、工事費用や月額の使用料は家主さんが、家賃に含めており(つまり、入居者にとってはタダ!)、別途費用がかからないという仕組みです。

 二つ目は、「入居日からブロードバンドが即日使用可能」という点は一つ目と同じですが、月額使用料が別途かかるという点が異なるケースです。これも、利便性は高いのですが、月額使用料がどの程度なのか(個人で設置する場合に比較して半額以下が目安でしょう)によって、よいかどうかの評価が分かれてくるでしょう。

 三つ目は、「入居後、別途申し込めば、ブロードバンドが利用できる」タイプです。このタイプは有料ですが、入居後、どの程度のタイムラグで利用できるようになるのか、月額使用料がどれくらいになるのか、退去時の手続きの費用はどうなのかなどを確認しておいたほうがよいでしょう。

 これら3つのタイプに共通するデメリットとしては、回線そのものは共有であるため、その分回線スピードは遅くなることと、場合によれば、ファイル交換など、容量の大きなデータのやり取りには制限を設けているケースもあるということです。

 四つ目は、「入居者が自由に申し込んでください」というタイプです。電話回線の「引込可能」と同じようなタイプです。このタイプは、すべて個人で申し込むため、工事費用や月額使用料は高くなりますが、回線そのものは独占して使用できるというメリットもあるため、ファイル交換などをよく行う人には適しているでしょう。

 そして、五つ目のタイプとしては、「インターネット接続不可能」というタイプの物件です。何らかの事情で、インターネットに接続できない環境になっている物件も存在しているのです 。

 これで、住まい探しの基本的な知識は終了します。

 さらに、「部屋情報の見方」、「下見のチェックポイント」、「契約手続き・契約書のチェックポイント」などについて詳細な情報をお知りになりたい方は、当団体スタッフのホームページ「楽々賃貸生活」をご覧ください。